人間国宝の世界

芸術の極み
その世界に入り込む

人間国宝の世界

十四代今泉今右衛門

経歴

佐賀・鍋島藩の御用窯「鍋島藩窯」の御用赤絵師を代々務めていた今泉家の次男として生まれました。
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業し、その後陶芸作家・鈴木治に師事しました。
1990年以降、人間国宝に認定された父である十三代今泉今右衛門のもとで家業に従事し、色鍋島を中心とする色絵磁器の陶芸技術を習得したという経歴をもちます。
陶芸分野史上最年少で国の重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。

作品

「墨はじき」という技法を発展させ、それを用いて独創的な作品を作り出しています。この技法では、まず墨で文様を描き、その上を染付で塗り、素焼の窯で焼くことで墨が飛び、白抜きの文様が現れます。
伝統技法の墨はじきで梅の花の芯を描くと、焼き上がりが雪の結晶に見えることに気づき、それから雪の結晶文様を追求し始めました。
上絵付にプラチナを施して変幻的な白金色を輝かせる「プラチナ彩」を導入し、色絵磁器の表現に新たな面を開いています。

芸術哲学

「陶芸という仕事は決められた価値観を表現する仕事ではなく、その時その時の自分の思いを、固定観念にとらわれることなく表現する仕事」と語っています。
また、「今右衛門」の各代が各々の時代に挑み、新たな展開を切り開いてきた伝統を引き継ぐ考えを示しております。

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井上萬二窯

経歴

佐賀県有田町出身で、生家は窯元でしたが、もともと軍人を志していました。1944年に海軍飛行予科練習生となり、戦後は酒井田柿右衛門(13代目)の元で働き始め、その後奥川忠右衛門の門下生となりました。
白磁や轆轤の技法を学び、その後独自の意匠や釉薬の研究に励み、1995年に白磁の重要無形文化財指定(人間国宝)に認定されました。

作品

1968年に第15回日本伝統工芸展で初入選を果たし、その後も多くの賞を受賞しています。1995年には重要無形文化財「白磁」保持者に認定され、1997年に紫綬褒章、2003年に旭日中綬章を受章しました。
有田焼の中でも特に白磁に徹し、華やかな絵付けが中心の有田焼の中で独特の制作を続けています。白磁の美しさとシンプルな造形で知られ、日本の伝統陶芸の精粋を示しています​。

芸術哲学

後進の育成にも力を注ぎ、教え子が500人を超え、アメリカでも150人を超えるほどです。自らの作風を通じて、伝統的な技法を守りつつも、常に新しい表現を求めて進化を続ける姿勢を示しています。

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窯元の世界

深海商店

理念

「常にお客様に感謝の気持ちを持ち、お客様を愛し、愛される会社」を経営理念としています。
顧客に対する深い感謝と愛情を大切にし、その信頼を築き上げてきた企業姿勢を示しています

技術

伝統的な色彩と現代的な感覚を融合させた呉須(ゴス)や釉薬を特徴としています。独自の色合いや質感の開発に力を入れ、陶磁器製造の新たな可能性を探求しております。

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香蘭社

理念

「製品の品質を精緻にすること、形状および画彩は美にすること、製造の費用を抑え原価を安くすること、名誉を保ち永久の利益を図ること」という理念のもと、伝統的な有田焼の技術と美を維持しながら、常に時代のニーズに応え、新しい表現に果敢に挑戦しております。

技術

有田色絵磁器の多様な文様を集大成し、有田の伝統様式を一歩前進させた美術品の製造、日本初の磁器製碍子の製造、最新技術を駆使したファインセラミックスの開発といった、窯業分野での高度な技術力を持ち、多岐にわたる事業を展開しています。

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辻精磁社

理念

「公(おおやけ)」に向けたものづくりを手がける窯元であり、生み出すものが公の品として評価される喜びと誇りを技に変え、栄職に恥じないものづくりを追求しています。
時代が変わっても、美しい品が与える喜びと驚きを信じ、普遍的な価値を目指し、研鑽を積んでおります。

技術

特徴的な技術は「極真焼」で、これは八代当主喜平次により発明された辻家秘伝の製法です。この技法では、製品と同質の磁土で匣鉢を作り、真空状態を作ることで内側のガスの浸透・拡散を遮断し、気品溢れる光沢と深い呉須の発色を得ることができます。この独特の製法は、昭和60年に十四代辻常陸が復元に成功し、現代に蘇りました。

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李荘

理念

「美しいものは永遠」という想いのもと、時代に左右されない美しい形を追求し、自らデザインを考案しながら器の制作に取り組んでいます。創業者である寺内信一さんの精神を継承し、高度経済成長期以降の大量生産大量消費の時代を経ても、その理念を貫いております。

技術

李荘窯は、呉須を使った「染付」に特化した製品を数多く制作しています。熟練職人による手作業で施される絵付けは、古伊万里などの伝統的な絵柄を継承しています。また、「鎬(Shinogi)」シリーズなどでは、伝統的な鎬手の技法と最新のデジタル技術の融合を通じて、機能的、かつ先進的な器を制作しており、有田の伝統と革新を組み合わせた作品を提供しています。

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香田陶土

理念

有田焼や伊万里焼などの陶磁器を支える重要な役割を担っており、133年以上にわたって高品質の陶土を作り続けています。人間国宝である井上萬二さんも香田陶土を愛用していることから、その品質と信頼性が伺えます。

技術

香田陶土の製造過程においては、最高級の陶石から赤い鉄分を取り除く「みがき作業」が重要で、この手作業には熟練した職人の技術が必要です。また、スタンパーという装置を使用して陶石を粉末にし、水に溶かす工程では職人の経験と勘が重要となります。最終的に、水分量18%の板状の粘土を作り出し、これを使用して有田焼や伊万里焼などの陶磁器が制作されています。

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